相談者掲載を頼もうと思ったら、シリアル番号を書く欄がありました。そんな番号、見たこともないんですが……。
案内役ほとんどの方がそうですよ。実は楽器本体を探すより、書類を探すほうが早いことが多いんです。順番にご案内しますね。
結論からお伝えします。シリアル番号を探すなら、まず楽器を探すのではなく、購入時の書類を探してください。保証書、領収書、納品書。このどれかに書かれていることがとても多いのです。
手元にない場合は、買ったお店に問い合わせてみてください。購入履歴が残っていれば教えてもらえます。それでも分からなければ、楽器本体の刻印を確認することになりますが、盗まれてしまった後では確認しようがありません。だからこそ、無事なうちに控えておく意味があります。
この記事では、シリアル番号がなぜそこまで重要なのか、どこを見れば分かるのか、そして見つからなかったときにどうするかをまとめました。
なぜシリアル番号がそこまで大事なのか
同じ型番の楽器は、世の中に何千本と存在します。「ヤマハのアルトサックス」では、探しようがありません。ところがシリアル番号は、その1本にしか付いていない番号です。ここが決定的に違います。
中古楽器店やリサイクルショップは古物営業法、質屋は質屋営業法に基づいて、買い取りのときに相手を確認し、品物の情報を記録することが求められています。シリアル番号もその対象です。不正品の疑いがあると認めたときは、警察へ申告することにもなっています。
届け出た番号が全国のお店へ自動で共有される仕組みがあるわけではありませんが、番号が分かっていれば、警察が照会する際やお店が不審に思った際に結びつく可能性が生まれます。
逆に番号が分からないまま届け出ると、照合のしようがありません。楽器が目の前の店頭に並んでいても、それがあなたのものだと示せないのです。実際に「似ている気がするけれど、証明できない」という状況は起こります。
もうひとつ。シリアル番号は、製造年を調べる手がかりにもなります。メーカーによっては番号から製造時期が分かるため、「同じ型番だが年代が違う別の個体」を区別できます。
楽器を探す前に、まず書類を探す
意外に思われるかもしれませんが、これがいちばん早い道です。次の場所を順に当たってみてください。
購入時の保証書。楽器店の納品書や領収書。ケースのポケットに入れっぱなしになっている書類。修理や調整に出したときのリペアショップの伝票。保険に加入しているなら、申込時に提出した書類。学校や楽団の備品であれば、備品台帳に記載されていることがあります。
リペアの伝票は見落とされがちですが、狙い目です。修理を受け付ける際にシリアル番号を控えるお店は少なくありません。過去に一度でも調整に出しているなら、問い合わせる価値があります。
それから、購入したお店への問い合わせです。何年前であっても、購入履歴が残っていることがあります。「いつごろ、どの機種を買った者ですが、シリアル番号が分かりますか」と尋ねてみてください。個人情報の確認を求められる場合はありますが、教えてもらえる可能性は十分にあります。
楽器本体のどこに刻まれているか
ここからは、楽器が手元にある場合の確認方法です。まだ無事な楽器をお持ちの方は、この機会にぜひ控えておいてください。
最初にお断りしておきますが、刻印の位置はメーカーや製造年代、モデルによって変わります。以下は目安としてお読みください。見当たらないときは、明るいところで角度を変えながら、金属面をゆっくり眺めてみるのがコツです。小さく浅い刻印は、光の向きによって見えたり見えなかったりします。
| 楽器 | 刻印がある場所の目安 |
|---|---|
| トランペット | 2番ピストンのケーシング部分。ブランド名はベルに彫られていることが多い |
| トロンボーン・ホルン | マウスピースを差し込むあたりや、支柱の近く |
| サックス | ベルの裏側、または右手親指を支える部分の下あたり |
| フルート・ピッコロ | 頭部管や胴部管の上部。5桁前後の数字だけのことが多い |
| クラリネット | 管体の上部。メーカー名や型番の刻印の近く |
| ギター・ベース | ヘッドの裏、ネックプレート、サウンドホール内のラベル |
トランペットなどの金管楽器

トランペットの場合、シリアル番号は2番ピストンのケーシング、つまり真ん中のピストンが入っている筒の部分に刻まれていることが多いです。楽器を構えたときに正面を向く面か、その反対側を見てみてください。
ベルには、メーカー名や装飾的な彫刻が入っています。こちらは目立つので分かりやすいのですが、彫刻に紛れて型番が入っていることもあります。ピストンを抜くと、そこにも番号が打たれている場合があります。ただしピストンの番号は組み立て用の管理番号で、楽器全体のシリアル番号とは別のこともあります。
ホルンやトロンボーン、ユーフォニアムも考え方は同じです。マウスピースを差し込む部分の近くや、管をつないでいる支柱のあたりに刻印されていることが多いので、そのあたりを重点的に探してみてください。
サックス

サックスはメーカーによって位置が変わります。ヤマハであれば、右手の親指を乗せる部分の下あたりに型番が刻まれ、その近くにシリアル番号が並んでいることが多いです。ヤナギサワはベルの部分やボディの裏側、セルマーはベルにモデル名が入り、シリアル番号は別の位置にあります。
共通して言えるのは、ベルの裏側と、親指を支える金具のまわりの2か所をまず見るということです。キイが密集していて見づらいので、ライトを当てて角度を変えながら探してください。
フルート・ピッコロ

フルートには、型番の刻印がないメーカーが少なくありません。代わりに5桁前後の数字だけが刻まれていて、これがシリアル番号にあたります。頭部管や胴部管の上のほう、メーカー名の刻印の近くを見てください。
ここで気をつけていただきたいのは、銀製のフルートに刻まれた3桁程度の数字です。これは銀の純度を示す表示であって、シリアル番号ではありません。925や958といった数字を見つけても、それは番号ではないとご理解ください。桁数が少ない数字は、まず純度表示を疑ってみるのが確実です。
クラリネット

上の写真をよく見ると、管体の上のほうにメーカー名と数字が刻まれているのが分かります。クラリネットはこのように、管体の上部に情報がまとまっていることが多い楽器です。
ひとつ注意点があります。バレルという短い部品の裏側にも数字が書かれていることがあるのですが、これはシリアル番号ではありません。調性やバレルの長さを表す数字です。ここを取り違えて届け出てしまうと、照合できなくなってしまいます。
相談者刻印らしきものは見つけたんですが、どこまでが番号なのか分かりません。
案内役迷ったら、刻印の部分を写真に撮っておいてください。判断に困ったときも、写真があれば楽器店の方に見てもらえます。数字を書き写すより確実ですよ。
どうしても見つからないときは
古い楽器や、刻印が摩耗している楽器では、どうしても読み取れないことがあります。その場合でも、あきらめる必要はありません。個体を特定できる情報は、番号だけではないからです。
まず、傷やへこみです。ただし「傷あり」だけでは意味がありません。「第2抜差管の付け根に、直径5ミリほどの浅い凹み」というように、場所と大きさまで書いてください。ここまで具体的であれば、他の個体と区別できます。
名前や記号の彫刻も強い手がかりです。学校の備品には管理番号が彫られていることがありますし、個人でイニシャルを入れている方もいます。修理歴も有効です。部品を交換していれば、その部分だけ色味や仕上げが違っているはずです。
ケースの特徴も忘れないでください。内装の色、ステッカー、ネームタグ、持ち手に結んだストラップ。運んでいる人が抱えているのはケースですから、目撃情報につながりやすいのはむしろこちらです。
それから、過去の写真を探してみてください。合奏やレッスンのスナップに楽器が写り込んでいることがあります。刻印までは読めなくても、傷の位置や仕上げの状態が分かる一枚は、所有を示す資料として役に立ちます。

見つけたら、必ず控えておく
番号が分かったら、その場で記録してください。ここで大事なのは、保管場所です。
よくある失敗が、保証書をケースのポケットに入れっぱなしにすることです。ケースごと盗まれてしまえば、番号も一緒に持っていかれます。所有を証明する書類は、楽器とは別の場所に保管してください。自宅の書類ケースでも、実家でも構いません。
おすすめは、刻印部分をスマートフォンで撮影して、クラウドに保存しておくことです。写真であれば読み間違いがありませんし、機種変更をしてもデータは残ります。楽器全体、ケースの外観、傷の部分もあわせて撮っておくと、万一のときにそのまま使えます。
学校や楽団の備品であれば、台帳にシリアル番号を追記しておくことを提案してみてください。担当が代わっても引き継がれますし、複数の楽器をまとめて管理できます。
ギター・ベース・弦楽器
エレキギターやエレキベースの場合、ヘッドの裏側に刻印またはシールで番号が入っていることが多いです。年代によってはネックとボディをつないでいる金属プレートに打刻されていることもあります。ヘッドの表面に貼られたロゴの近くを見て、それらしい数字が見当たらなければ、裏返して確認してみてください。
アコースティックギターは、サウンドホールから中をのぞいてみてください。内部に貼られたラベルに、製造番号や製造年が印刷されていることがあります。スマートフォンのライトを当てると読みやすくなります。
バイオリンやチェロといった擦弦楽器は事情が少し異なります。工房で製作された楽器には、f字孔から見える位置に製作者のラベルが貼られており、製作者名と製作年が記されています。量産品であればシリアル番号が入っていることもありますが、必ずしもすべての楽器にあるわけではありません。
番号が存在しない楽器の場合は、鑑定書や保証書が事実上の身分証明になります。高額な弦楽器では鑑定書が発行されていることが多いので、これを楽器とは別に保管しておいてください。写真も撮っておきましょう。木目や傷の入り方は個体ごとに違いますから、鮮明な写真そのものが識別の材料になります。
番号を控えておくと、こんなときに効いてきます
少し具体的な場面を想像してみてください。あなたの楽器が盗まれ、犯人が近所の中古楽器店に持ち込んだとします。
お店は買い取りの際に、持ち込んだ人の身元を確認し、楽器の情報を記録します。ここで記録されるのがシリアル番号です。そして古物商には、不正品の疑いがあると認めたときに警察へ申告する義務があります(古物営業法15条3項)。届け出た番号が全国のお店へ自動で共有されるわけではありませんが、番号が分かっていれば、こうした場面で結びつく可能性が生まれます。
逆に番号が分からないまま「ヤマハのトランペットです」とだけ届け出ていた場合はどうでしょうか。お店に同じ機種が並んでいても、それがあなたのものだと判断する材料がありません。せっかく目の前にあっても、素通りしてしまうことになります。
もうひとつの場面が、フリマアプリでの発見です。出品写真に刻印まで写り込んでいることがあります。番号を控えていれば、その写真と照らし合わせて確認できます。逆に控えていなければ、「似ている気がする」で終わってしまいます。証拠として警察に持ち込むときも、番号の一致は強い材料になります。
つまりシリアル番号は、探すための道具というより、見つかったときに自分のものだと示すための鍵です。楽器が無事なうちにしかできない準備ですので、今この記事を読んでいる時点で控えていないのであれば、あとでご確認ください。

もし盗難や紛失にあってしまったら
シリアル番号が分かっている状態でなくなってしまった場合は、すぐに警察へ届け出てください。盗難なら被害届、置き忘れなら遺失届です。このとき番号を伝えられれば、その後の照合につながります。
そのうえで、情報を公開して探す方法もあります。当センターでは、盗難や紛失にあった楽器の情報を無料で掲載しています。シリアル番号や特徴を公開しておくことで、見かけた方から情報が届く可能性が生まれます。掲載の際には、フリマアプリやオークションで探すための検索キーワードもお渡ししています。
番号が分からないままでも掲載はできます。傷の位置やケースの特徴など、分かる範囲で構いませんので、まずはご相談ください。
よくある質問
- シリアル番号と型番は違うものですか
-
違います。型番は機種を表すもので、同じ機種であればすべて同じ番号です。シリアル番号は1本ごとに異なる番号で、個体を特定できるのはこちらです。届け出るときは両方伝えられるのが理想ですが、より重要なのはシリアル番号のほうです。
- 中古で買った楽器でも、シリアル番号は有効ですか
-
有効です。番号は楽器そのものに刻まれているので、所有者が変わっても変わりません。ただし前の持ち主の購入書類は手元にないはずですから、中古で購入したときの領収書や納品書を大切に保管しておいてください。所有していることを示す資料になります。
- 刻印が薄くて読めません。どうすればいいですか
-
明るい場所で、光の角度を変えながら見てみてください。斜めから光を当てると、浅い刻印でも影ができて読みやすくなります。それでも判読できない場合は、無理に磨いたりせず、そのまま写真に撮って楽器店やリペアショップで見てもらうのが安全です。研磨すると刻印が消えてしまうことがあります。
- 学校の備品なのですが、誰が管理すべきですか
-
所有者は学校ですので、台帳での管理が基本になります。とはいえ実際に扱うのは生徒さんですから、顧問の先生と相談して、楽器ごとにシリアル番号と写真を残しておく形が現実的です。年度の切り替わりで担当が代わっても引き継げるようにしておくと安心です。
- 番号が分からないと掲載してもらえませんか
-
そんなことはありません。シリアル番号がなくても掲載できます。ただ、あるほうが照合の確実性は上がりますので、掲載後に判明した場合はお知らせください。追記いたします。分かる範囲の情報で、まずは公開しておくことをおすすめします。
相談者保証書、実家にあるかもしれません。探してみます。
案内役ぜひ探してみてください。見つかったら、今度はケースの中ではなく別の場所に保管を。写真に撮ってクラウドに置いておくのがおすすめです。
まとめ
シリアル番号は、その1本だけに付けられた番号です。中古楽器店も質屋も、買い取りのときにこの番号を記録します。だからこそ、盗難や紛失のときに決め手になります。
探すときは、楽器本体より先に書類を当たってください。保証書、領収書、リペアの伝票、購入店の履歴。この順で当たれば、多くの場合は見つかります。本体を見る場合は、トランペットなら2番ピストンのケーシング、サックスならベルの裏や親指を支える部分の下、フルートなら頭部管の上部あたりが目安です。
そして見つかったら、ケースの中ではない場所に保管してください。写真に撮ってクラウドに残しておけば、なくす心配もありません。
楽器盗難・紛失情報センターでは、盗難や紛失にあった楽器の情報を無料で掲載しています。シリアル番号が分からなくても、傷の位置やケースの特徴など分かる範囲でご相談いただけます。掲載時には、フリマアプリなどで探すための検索キーワードもお渡ししています。ひとりで抱え込まず、まずはお声がけください。
※ 刻印の位置はメーカー・製造年代・モデルによって異なります。この記事の内容は一般的な目安としてお読みください。
※ この記事は一般的な情報をまとめたものであり、法律上の助言を行うものではありません。当センターは警察・行政機関・法律事務所ではありません。個別の事情によって対応が異なる場合がありますので、警察・弁護士等の専門家へご相談ください。
