盗まれた楽器をネットで見つけたら|連絡は厳禁

相談者

メルカリで、自分の楽器そっくりの出品を見つけました。今すぐ出品者に連絡していいですか。

案内役

待ってください。そこだけは絶対にやめてください。まずスクリーンショットです。連絡した瞬間に出品が消えて、手がかりごとなくなってしまいますから。

結論からお伝えします。自分の楽器らしい出品を見つけたら、出品者には連絡しないでください。まずスクリーンショットとURLを保存し、そのうえで警察に連絡してください。この順番を守るかどうかで、その後がまったく変わります。

見つけた瞬間は、心臓が跳ねるような気持ちになると思います。「これは自分のだ」と確信して、すぐにでも問い合わせたくなります。その気持ちはよく分かるのですが、そこで動くと、ほぼ確実に事態が悪くなります。

この記事では、見つけたときにやるべきことを順番に、そしてやってはいけないことをその理由とともにまとめました。

なぜ出品者に連絡してはいけないのか

白い背景に置かれたアルトサクソフォン

理由は3つあります。どれも実際に起こりうることです。

出品が消えて、行方が分からなくなる

相手が事情を知っていれば、問い合わせを受けた時点で警戒します。出品を取り下げ、アカウントごと消してしまうこともあります。そうなると、せっかく見つけた手がかりが跡形もなくなります。

楽器は別のサービスに移されるか、別の名義で出し直されるでしょう。次にいつ現れるかは分かりません。ひとこと送っただけで、何か月も待った成果が消えてしまうのです。

出品者が犯人とは限らない

ここは特に気をつけていただきたいところです。盗まれた楽器は、人の手を何度も渡ることがあります。中古店で普通に買った方が、使わなくなって売りに出しているだけかもしれません。その方は何も悪いことをしていません。

そこへ「これは盗品です」「返してください」と連絡してしまうと、無関係な方を犯人扱いすることになります。相手にも生活があり、名誉があります。思い込みで一方的に責めれば、こちらが加害者の側に立つことにもなりかねません。

直接会うと危険がある

「現物を確認させてほしい」というやり取りから、直接会う流れになることがあります。相手が本当に盗んだ人物だった場合、何が起こるか分かりません。金銭が絡む場面でもあります。

取り返したい気持ちは当然ですが、ご自身の安全を最優先にしてください。楽器は買い直せますが、身の安全は取り返しがつきません。

買い戻すのもやめてください

「お金を払えば戻ってくるなら」と考えて、購入してしまう方がいらっしゃいます。気持ちは理解できますが、これもおすすめできません。

盗んだ側に利益を渡すことになりますし、購入という形をとってしまうと、その後の手続きが複雑になります。本来であれば支払わずに戻ってくる可能性もあるのです。まずは警察に相談してください。

見つけたら、この順番で動いてください

やることは決まっています。慌てずに、上から順に進めてください。

1. まずスクリーンショットを撮る

何よりも先にこれです。出品ページは、あなたが見ているあいだにも消える可能性があります。売れてしまえば表示されなくなりますし、出品者が取り下げることもあります。

撮っておきたいのは、出品ページの全体、商品写真すべて、商品説明の文章、出品者の名前と評価、価格、出品日時です。写真は拡大して、傷や刻印が写っている部分を個別に撮っておくとなお良いです。画面に日時が表示されていると、いつ確認したかの記録にもなります。

2. URLを控える

ページのアドレスをコピーして、メモに残してください。スクリーンショットだけでは、どのページだったかを後から示しにくいことがあります。URLがあれば、警察が確認するときにも話が早く進みます。

3. 手元の資料と照らし合わせる

落ち着いて確認しましょう。シリアル番号が写真に写っていれば、控えていた番号と一致するか見てください。ここが一致すれば、かなり確度の高い材料になります。

番号が写っていない場合は、傷の位置や形、部品の交換歴、仕上げの状態を見比べてください。ケースが一緒に写っているなら、内装の色やステッカーも確認します。同じ機種というだけでは足りませんので、その個体ならではの特徴を探してください。

4. 警察に連絡する

届出をした警察署に、受理番号や届出の控えを伝えて連絡してください。「届け出ていた楽器と思われる出品を見つけました」と説明し、URLとスクリーンショットを提示します。

そのあとどう動くかは、警察の指示に従ってください。自分で先に動きたくなるかもしれませんが、ここは我慢のしどころです。

なお、連絡すれば必ず警察が回収してくれるというものではありません。どう動くかは状況によって変わります。材料をそろえて相談する、という姿勢でお考えください。

相談者

フリマアプリの運営に通報するのはどうでしょう。すぐ止めてもらえそうな気がして。

案内役

選択肢のひとつではあります。ただ、通報で出品が削除されると証拠ごと消えてしまうことがあるんです。記録を取ってから、警察に相談したうえで判断するのが安全ですよ。

中古楽器店の店頭で見つけた場合

赤い背景に置かれたトランペットのベルとピストン部分

ネット上ではなく、実際のお店で見つけることもあります。この場合も基本は同じですが、いくつか違いがあります。

まず、その場で店員さんに「これは私の楽器です」と主張するのは避けてください。お店は事情を知らずに買い取っているのが普通です。突然そう言われても、確認のしようがありません。かえって話がこじれてしまいます。

お店の名前と場所、見つけた日時、値札に書かれている情報を控えてください。可能であれば、シリアル番号が見える位置にあるか確認します。撮影は、お店によっては断られますので、必ず許可を得てからにしてください。無断で撮ると別のトラブルになります。

そのうえで警察に連絡します。警察を通してお店に照会してもらうのが、いちばん確実な進め方です。中古品を扱うお店は、買い取りの記録を残す義務があり、警察の照会に応じることになっています。ですから、正規のルートで進めれば話は通ります。

なお、お店側も盗品と分かれば協力してくれるのが一般的です。盗品を扱ってしまうことは、お店にとっても損失だからです。敵対的な姿勢で臨む必要はありません。

似ているだけかもしれない、という視点も持ってください

同じように並べられた複数のフルート

厳しいことを申し上げますが、同じ機種の楽器は世の中にたくさんあります。上の写真のように並べてしまえば、外見だけで見分けるのは困難です。

「自分のに違いない」と思っても、別の個体である可能性は常にあります。だからこそ、シリアル番号や傷の位置といった客観的な材料が必要になるのです。感覚だけで動くと、無関係な方を巻き込んでしまいます。

とはいえ、確信が持てないから通報しない、という判断も違います。記録を取って警察に伝えるところまでは、確信がなくてもやってよいのです。判断するのは警察の役目ですから、材料を渡すところまでを自分の仕事だと考えてください。

ひとつ言えるのは、記録は多いほど良いということです。撮っておいて無駄になることはありません。逆に、撮らなかったことを後悔する場面はよくあります。

出品ページのどこを見れば判断できるか

スクリーンショットを撮ったら、落ち着いて中身を読んでみてください。出品ページには、判断の材料になる情報が思いのほか含まれています。

写真の背景や写り込み

撮影場所の様子から、地域の見当がつくことがあります。窓の外の景色、床や壁の質感、一緒に写り込んだ生活用品。もちろん決め手にはなりませんが、なくした場所の近くだと分かれば、可能性は上がります。

ケースが一緒に写っている場合は、そちらもよく見てください。楽器本体は同じ機種がたくさんあっても、ケースに貼ったステッカーや結んだストラップは、あなたにしかない組み合わせのはずです。

説明文の書き方

楽器のことをよく知っている人が書いた文章か、そうでないかは、読めばだいたい分かります。機種名を間違えていたり、部位の呼び方がおかしかったり、状態の説明が妙に曖昧だったり。演奏者なら当然触れるはずの点に一切触れていない、ということもあります。

「譲り受けたもので詳しくありません」といった書き方も、それ自体は普通のことですが、他の材料と合わせて見る価値はあります。

出品者の評価と履歴

アカウントが作られたばかりであったり、楽器と関係のない品ばかりを大量に出していたりする場合は、記録として残しておく価値があります。ただしこれも、それだけで判断できるものではありません。単に整理のために売っている方もたくさんいます。

大事なのは、こうした情報を自分で解釈しすぎないことです。集めて、警察に渡す。判断はそちらに委ねる。この線引きを守ってください。

気持ちの整理について

最後に、少し実務から離れた話をさせてください。

楽器を盗まれた方とお話ししていると、金額の問題ではないのだ、という言葉をよく聞きます。何年も一緒に演奏してきた楽器には、値段では測れないものが積み重なっています。だから見つけた瞬間に冷静でいるのは、本当に難しいことだと思います。

それでも、この記事で申し上げてきたことは変わりません。連絡しない。記録を残す。警察を通す。感情のままに動くと、取り戻せるはずだったものまで失いかねないからです。

そして、ひとりで抱え込まないでください。楽団の仲間でも、楽器店の方でも、当センターでも構いません。誰かに状況を話すだけでも、次にやることが見えてくるものです。探すのは長期戦になることが多いので、続けられる形をつくることが何より大切です。

見つけやすくするための備え

ここまでは見つけたあとの話でしたが、見つけるための準備についても触れておきます。

フリマアプリやオークションには、検索条件を保存して新着を知らせてくれる機能があります。毎日手作業で見に行くのは続きませんので、通知が届く形にしておいてください。楽器は数か月後、ときには数年後に現れることもあります。長く続けられる仕組みにすることが大切です。

キーワードは、書き方を変えて複数登録してください。出品する人が正式名称で書くとは限らないからです。英字とカタカナの両方、ハイフンのあるなし、枝番を落とした形、通称。ひとつの楽器につき5通りから8通りは用意しておきたいところです。

ご自身で探すのと並行して、情報を公開しておく方法もあります。当センターでは、盗難や紛失にあった楽器の情報を無料で掲載しています。特徴やシリアル番号を公開することで、見かけた方から情報が届く仕組みです。掲載のときには、いま申し上げた表記ゆれを含んだ検索キーワードと、各サービスの検索リンクもお渡ししています。

寄せられた情報は、こちらから掲載者へお伝えします。その際、情報をくださった方の氏名や連絡先が掲載者に渡ることはありません。当センターが間に入る形にしていますので、当事者同士が直接ぶつかることも避けられます。

よくある質問

出品者に質問するふりをして探るのはどうですか

おすすめしません。購入希望を装って質問しても、警戒されれば同じことです。相手に「探られている」と感じさせた時点で、出品は消えると考えてください。得られる情報より失うもののほうが大きいです。まず記録を取って、警察に相談してください。

警察に連絡したのに動いてもらえません

証拠の材料が足りていない可能性があります。シリアル番号の一致など、その個体だと示せる情報を添えて、もう一度相談してみてください。届出時の受理番号を伝えることも大切です。それでも進まない場合は、別の日に改めて相談すると担当者が変わることもあります。

SNSで拡散して探すのは有効ですか

楽器の情報を広めること自体は有効です。ただし、特定の出品や個人を名指しして拡散するのは避けてください。相手が無関係だった場合、こちらが責任を問われることになります。拡散するのは楽器の特徴と写真にとどめ、犯人探しの形にしないことが大切です。

出品がもう売れてしまっていました

それでも記録は残しておいてください。取引が成立していれば、サービス側に記録が残っています。警察を通せば照会できる可能性があります。あきらめる前に、控えたURLとスクリーンショットを持って相談してみてください。

見つかった楽器は必ず返ってきますか

状況によって変わります。盗まれてからの期間や、いま持っている方がどういう経緯で手に入れたかによって、手続きが異なるためです。無償で戻る場合もあれば、費用の負担が生じる場合もあります。個別の判断が必要になりますので、警察や専門家に確認しながら進めてください。

相談者

危うく連絡するところでした。まず撮ってから警察ですね。

案内役

その順番です。焦る場面ですが、記録さえ残しておけば道は残ります。ひとりで抱えず、迷ったらご相談くださいね。

まとめ

自分の楽器らしい出品を見つけたら、出品者には連絡しない。まずスクリーンショットとURLを保存し、手元の資料と照らし合わせ、そのうえで警察に連絡する。この順番だけは覚えておいてください。

連絡してしまうと出品が消え、手がかりごと失われます。しかも出品者が犯人とは限りません。無関係な方を巻き込む危険もあります。焦る場面ですが、記録を残すことに徹してください。

お店の店頭で見つけた場合も同じです。その場で主張せず、情報を控えて警察を通してください。正規のルートで進めたほうが、結果的に早く解決します。

楽器盗難・紛失情報センターでは、盗難や紛失にあった楽器の情報を無料で掲載しています。ご自身で探すための検索キーワードもお渡ししていますので、見張る手間を減らすことができます。寄せられた情報は当センターが間に入ってお伝えしますので、当事者同士が直接ぶつかることもありません。探し方に迷ったら、一度ご相談ください。

※ この記事は一般的な情報をまとめたものであり、法律上の助言を行うものではありません。当センターは警察・行政機関・法律事務所ではありません。個別の事情によって対応が異なる場合がありますので、警察・弁護士等の専門家へご相談ください。