楽器の盗難を防ぐには|今日できる備えと対策

相談者

周りで盗難の話を聞いて、急に怖くなりました。うちの楽器は大丈夫でしょうか。

案内役

いい機会ですよ。実は今日すぐできる備えがあります。しかも無料です。シリアル番号を控えて、写真を撮っておく。これだけで、万一のときの結果がまるで変わります。

結論からお伝えします。盗難を完全に防ぐ方法はありません。ですが、被害にあう確率を下げることと、あってしまったときに取り戻せる確率を上げることは、どちらもできます。

そして後者のほうが、実は簡単で、効果も確実です。シリアル番号を控えて、楽器の写真を撮っておく。今日中に終わりますし、お金もかかりません。それでいて、いざというときの分かれ道になります。

この記事では、盗まれにくくする工夫と、万一に備えておくことの両方をまとめました。全部やろうとせず、できるところから取り入れてみてください。

今日できる、いちばん効く備え

木のテーブルに置かれたフルートのキイ部分

まずここから始めてください。順番に並べます。

シリアル番号を控える

楽器に刻まれた番号は、その1本にしかない番号です。中古品を扱うお店は買い取りのときにこれを記録し、不正品の疑いがあると認めたときは警察へ申告することになっています。つまり、番号が分かっていれば、照会や申告の場面で結びつく可能性が生まれます。

逆に番号を知らないまま盗まれてしまうと、目の前の店頭に自分の楽器が並んでいても、それを示す手立てがありません。ここが本当に大きな差になります。

保証書や購入時の書類に書かれていることが多いので、まずそちらを確認してください。見当たらなければ楽器本体の刻印を探します。トランペットなら2番ピストンのケーシング、サックスならベルの裏や親指を支える部分の下、フルートなら頭部管の上部あたりが目安です。

写真を撮っておく

楽器全体、ケースの外観、そして刻印の部分。この3枚は最低限撮っておいてください。傷やへこみがあれば、その部分も個別に。

写真であれば読み間違いがありませんし、届出のときにそのまま使えます。フリマアプリで似た出品を見つけたときも、手元の写真と見比べられます。撮影は5分もかかりません。

書類は楽器と別の場所に置く

よくある失敗が、保証書をケースのポケットに入れっぱなしにすることです。ケースごと持っていかれれば、所有を示す書類も一緒に消えます。

書類は自宅の別の場所に保管し、写真データはクラウドに置いておく。これで、楽器がなくなっても情報だけは手元に残ります。

学校や楽団の備品は台帳に

団体の備品は、担当者が代わると情報が引き継がれないことがあります。備品台帳にシリアル番号と写真を残しておけば、年度が変わっても情報が残ります。

本数が多い場合は、一度に全部やろうとせず、定期演奏会の前などの区切りで少しずつ進めるとよいでしょう。顧問の先生や役員の方に提案してみてください。

盗まれやすい場面を知っておく

ケースの上に置かれたホルンのベル部分

どういう場面が危ないかを知っておくだけでも、防げるものがあります。

車の中に置いたまま離れる

これがいちばん危険です。楽器ケースは外から見て中身が分かりますし、換金しやすいことも知られています。コンビニに寄るだけ、食事のあいだだけ、という短時間でも狙われます。

どうしても車を離れるなら、後部座席ではなくトランクへ。ただし停めてからトランクに移すのは、その様子を見られてしまいます。乗る前から入れておいてください。

練習場所に置きっぱなしにする

部室や練習室に置いて帰るのは、施錠の状況によります。鍵がかかる部屋でも、合鍵を持つ人が多ければリスクは残ります。休みが長く続く期間は、持ち帰るほうが安全です。

置いておく場合も、誰でも見える棚の上ではなく、ロッカーの中に入れる。それだけで狙われにくくなります。

本番や合宿など、人の出入りが多い場面

ホールの控室や合宿所は、関係者以外も出入りできることがあります。しかも大勢が慌ただしく動くので、誰が何を持ち出しても目立ちません。

本番前は特に注意が散漫になります。舞台袖に置く場所を決めておく、貴重品と一緒にまとめて誰かが見ておく、といった取り決めを事前にしておくと安心です。

移動中に手を離す

電車の網棚、飲食店の隣の席、駅のベンチ。少しのあいだ手を離した隙に、というのは置き引きの典型です。楽器ケースは大きいので、置く場所に困って目を離しがちになります。

混雑した場所では、体に触れる位置に置く。網棚に上げるなら、自分の座席から見える位置に。基本的なことですが、これで防げる被害は少なくありません。

相談者

ケースに名前を大きく書いておくのは、防犯になりますか。

案内役

効果はありますが、住所や電話番号まで書くのはおすすめしません。落とし物として戻る利点はある一方で、個人情報を持ち歩くことにもなりますから、名字だけにしておくのが無難です。

見た目で狙われにくくする

赤い背景に置かれたトランペットのベルとピストン部分

盗む側から見て「面倒だ」「目立つ」と思わせることも、立派な対策です。

まず、ケースに個性を出しておくこと。ステッカーを貼る、目立つ色のストラップを付ける、ネームタグを付ける。こうした特徴があると、売りに出しにくくなりますし、目撃情報にもつながりやすくなります。実際、楽器本体より先にケースの特徴で見つかることもあります。

持ち運ぶときは、楽器だと分かりにくいケースを使う方法もあります。管楽器用のリュック型ケースなどは、遠目には楽器に見えません。ただし、演奏する仲間内では分かってしまいますし、通学や通勤の経路が同じであれば意味は薄れます。過信はしないでください。

自宅での保管も見直しておきましょう。窓から見える位置に置かない、玄関のすぐ近くに置かない。留守がちな時期は、目につかない場所へ移しておく。基本的なことですが、効果はあります。

なぜ楽器は狙われるのか

白い背景に置かれたトランペット

対策を考えるうえで、狙われる理由を知っておくと納得しやすくなります。

ひとつは、換金しやすいことです。楽器は中古市場が確立していて、買い取ってくれる場所がたくさんあります。しかも型番が分かれば相場もすぐ調べられるため、いくらになるか見当がつきます。盗む側からすれば、扱いやすい品物なのです。

もうひとつは、持ち主が管理情報を持っていないことが多い点です。自転車やパソコンであれば防犯登録や製造番号を控えている方も多いのですが、楽器となると「シリアル番号を見たこともない」という方が大半です。番号が分からなければ追跡されにくく、盗む側にとってはそのぶん安全ということになります。

裏を返せば、番号を控えておくだけで、その安全性を崩せるということです。この記事の冒頭で「今日できるいちばん効く備え」と申し上げたのは、そういう意味でもあります。

そして、被害にあった直後に届け出をしない方が多いことも、残念ながら狙われやすさにつながっています。届出がなければ照合されようがありません。もし周りに被害にあった方がいたら、まず届け出ることをすすめてあげてください。

団体で取り組むなら、こう進めると続きます

吹奏楽部やアマチュアオーケストラのように、楽器の本数が多い団体では、個人任せにすると管理が続きません。仕組みにしてしまうのがコツです。

一覧をつくって共有する

楽器名、メーカー、型番、シリアル番号、写真。この5つを一覧にしておけば十分です。表計算ソフトでも構いませんし、共有できる形にしておくと引き継ぎが楽になります。

一度に全部やろうとすると挫折しますので、パートごとに担当を決めて分担するのがおすすめです。パートリーダーが自分のパートの楽器を担当すれば、数本ずつで済みます。

持ち出しの記録を残す

誰がいつ持ち出したかが分かるようになっていると、なくなったときに状況を絞り込めます。ノートに書くだけでも構いません。厳格に運用しようとすると続かないので、「持ち帰るときだけ書く」くらいの緩さで始めるとよいでしょう。

長期休暇前に点検する

夏休みや冬休みの前は、まとめて確認する良い機会です。全部そろっているか、保管場所は施錠されるか、持ち帰る楽器はどれか。この確認を年中行事にしておくと、抜けが起きにくくなります。

実際、長期休暇のあいだに被害が起きたという話は珍しくありません。人がいない期間が続くからです。休みに入る前の点検を、ぜひ習慣にしてみてください。

保険を確認しておく

備えという意味では、保険の確認も入れておきたいところです。

楽器保険に加入していれば、盗難が補償の対象になっているか確認してください。加入していなくても、火災保険の家財補償で自宅からの盗難がカバーされることがあります。楽器をクレジットカードで購入していれば、カードに付帯する動産保険が使える場合もあります。学校や楽団が団体で加入している保険が適用されることもあります。

補償の有無や条件は、保険会社や契約内容、付帯している特約によって大きく異なります。屋外での事故や持ち出し中の被害が対象外というケースもあります。何が対象で何が対象外なのか、加入している保険会社や代理店へ必ずご確認ください。

どの保険を使うにせよ、警察への届出や受理番号を求められることがあります。必要かどうかは契約によりますので、加入先へご確認ください。

もし被害にあってしまったら

どれだけ備えていても、被害にあうときはあります。そのときは、次の順番で動いてください。

まず状況を書き留めます。最後に見た日時と場所、気づいた日時。記憶は驚くほど早く曖昧になりますので、その日のうちにメモしてください。

次に警察へ。盗難なら被害届、置き忘れなら遺失届です。控えておいたシリアル番号と写真が、ここで効いてきます。受理番号は必ず控えてください。

そのうえで、情報を広げます。楽団や学校、近隣の楽器店に伝え、フリマアプリには検索条件を登録しておく。そして、情報を公開して見かけた人から連絡をもらえるようにしておくことも有効です。

当センターでは、盗難や紛失にあった楽器の情報を無料で掲載しています。特徴やシリアル番号を公開することで、見かけた方から情報が届く仕組みです。掲載のときには、フリマアプリなどで探すための検索キーワードもお渡ししています。備えておいた情報が、そのまま掲載内容として使えます。

よくある質問

楽器に自分で刻印を入れるのは有効ですか

個体を特定しやすくなる利点はあります。ただし楽器の価値を下げることがありますし、修理や調整に影響する場合もあります。実行する前に、必ずリペアショップに相談してください。目立たない場所に小さく入れる方法を提案してもらえることもあります。

追跡タグをケースに入れておくのはどうでしょう

選択肢のひとつです。ただし電池が切れれば機能しませんし、見つけられて捨てられることもあります。過信は禁物です。仮に位置が分かっても、ご自身で取りに行くのは危険ですので、警察に相談してください。あくまで補助的な手段と考えるのがよいでしょう。

古い楽器なので盗まれないと思うのですが

油断は禁物です。古い楽器でも、機種によっては中古市場で高く取引されます。盗む側が価値を知らずに持ち出すこともあります。年式にかかわらず、シリアル番号と写真は控えておいてください。手間はほとんどかかりません。

部活の楽器が心配です。何から始めればいいですか

まず備品台帳にシリアル番号があるか確認してください。なければ追記するところから始めます。全部を一度にやろうとせず、パートごとに分担すると進みます。あわせて、長期休暇中の保管方法を決めておくとよいでしょう。管理の仕方は学校によって違いますので、顧問の先生と相談しながら進めてください。

中古で買った楽器でも備えは必要ですか

必要です。むしろ中古の場合、前の持ち主の書類は手元にありませんから、購入時の領収書を大切に保管してください。シリアル番号は楽器そのものに刻まれているので、所有者が変わっても有効です。買ったその日に控えておくのが理想です。

相談者

今夜、シリアル番号を探して写真を撮っておきます。

案内役

それが何よりの備えです。写真はクラウドに置いて、書類はケースの外へ。この2つだけでも、いざというときの結果が変わりますよ。

まとめ

盗難を完全に防ぐことはできません。ですから、防ぐ工夫と、あったときに取り戻すための備えを、両方やっておくという考え方が現実的です。

防ぐ側では、車内に置かない、練習場所に置きっぱなしにしない、移動中に目を離さない。この3つを意識するだけでも違います。ケースに特徴を持たせておくと、売りにくくなり、目撃情報にもつながります。

備える側では、シリアル番号を控えて、写真を撮って、書類を楽器と別の場所に保管する。今日中に終わりますし、費用もかかりません。それでいて、万一のときにいちばん効きます。

楽器盗難・紛失情報センターでは、盗難や紛失にあった楽器の情報を無料で掲載しています。備えておいた情報は、そのまま掲載内容としてお使いいただけます。掲載時には探すための検索キーワードもお渡ししていますので、万一のときはご相談ください。何も起こらないのがいちばんですが、備えだけは今日のうちに。

※ 保険の補償内容や備品の管理方法は、契約や所属先によって異なりますので、それぞれの窓口でご確認ください。
※ この記事は一般的な情報をまとめたものであり、法律上の助言を行うものではありません。当センターは警察・行政機関・法律事務所ではありません。個別の事情によって対応が異なる場合がありますので、警察・弁護士等の専門家へご相談ください。