見つかった楽器を取り戻すには|手続きと期限

相談者

警察から連絡があって、楽器が見つかったそうなんです。これですぐ返ってくるんですよね。

案内役

よかったですね。ただ、そこから少し手続きが残っていることが多いんです。誰が今持っているかで流れが変わりますので、順番に見ていきましょう。

結論からお伝えします。楽器が見つかっても、その日のうちに手元へ戻るとは限りません。いま誰が持っているか、盗まれてからどれだけ経ったかによって、手続きも費用負担も変わってきます。

ただ、悲観する必要はありません。盗品や遺失物については、持ち主が盗難・遺失の時から2年間、いま持っている人に回復を請求できると定められています。大事なのは、期間が過ぎる前に動くことと、自分のものだと示せる材料を持っていることです。

この記事では、見つかったあとに何が起こるのか、どんな費用が発生しうるのか、そして手続きをスムーズに進めるために何を用意しておけばよいのかをまとめました。

誰が持っているかで、流れが変わります

トランペットの写真

見つかったと言っても、状況はいくつかに分かれます。それぞれで進み方が違います。

警察が保管している場合

いちばん分かりやすいのがこの形です。拾得物として届けられていたり、事件の捜査で押収されていたりする場合です。

持ち主であることを確認できれば返してもらえます。ただし捜査中の場合は、証拠として必要な期間が終わるまで待つことになります。いつごろになりそうかは、担当の方に確認してみてください。

中古楽器店や質屋が持っている場合

実際にはこのパターンが多いです。盗んだ側が換金のために持ち込み、お店が事情を知らずに買い取っているという状況です。

この場合、お店に落ち度はありません。ですが法律では、持ち主を保護する仕組みが用意されています。詳しくは次の章でご説明します。

個人が持っている場合

フリマアプリで買った方、譲り受けた方などです。この方も多くの場合、事情を知りません。

当事者同士で話をつけようとすると、感情的になってこじれます。必ず警察を通してください。ご自身で連絡を取るのは避けていただきたいところです。

無償で戻るか、費用がかかるか

ここがいちばん気になるところだと思います。法律で期間が定められていて、状況によって扱いが変わります。

いま持っている相手盗難からの期間扱い
相手が誰であっても(民法193条)盗難・遺失から2年以内回復を請求できる
相手が競売・公の市場・同種の商人から善意で買った場合(民法194条)同上相手が支払った代価を弁償しなければ回復できない
相手が古物商で、上の194条にあたる場合(古物営業法20条)盗難・遺失から1年以内弁償なしで回復を求められる
いずれの場合も2年経過後回復を求めることが難しくなる

ポイントは2つあります。ひとつは、2年という期間は古物商相手に限らず、いま持っている人が誰であっても共通だということ(民法193条)。もうひとつは、弁償が必要になるかどうかは、相手がどこから手に入れたかで変わるということです(同194条・古物営業法20条)。

条文上、弁償の対象となるのは相手が支払った代価です。ただし実際にいくらになるか、どのような手続きで進むかは事案によって変わります。

また、これらはいずれも「請求することができる」という定めであり、必ず戻ることを保証するものではありません。相手が任意に応じない場合、実際に取り戻すには交渉や法的な手続きが必要になることがあります。

ただし、これは一般的な考え方です。実際の判断は個別の事情によって変わりますので、必ず警察や専門家に確認しながら進めてください。

2年という数字を覚えておいてください

盗まれてから時間が経つほど、取り戻すのは難しくなります。「そのうち出てくるだろう」と待っているうちに期間が過ぎてしまうと、見つかっても手が出せません。

だからこそ、被害届を早く出し、シリアル番号を伝えておくことに意味があります。古物商には不正品の疑いがあると認めたときの申告義務があり、警察が必要と判断すれば「品触れ」を出すこともあります。自動で照合される仕組みがあるわけではありませんが、番号が分かっていれば結びつく可能性が生まれます。

連絡が来たときに、まず確認すること

ユーフォニアムの写真

警察から「それらしい楽器が見つかった」と連絡が入ったら、うれしさで頭がいっぱいになると思います。ただ、その電話でいくつか聞いておくと、あとの動きがスムーズになります。

まず、シリアル番号が一致しているかどうか。これが確認できれば、まず間違いありません。次に、いまどこにあるのか。警察が保管しているのか、お店や個人が持っているのかで、この先の手続きがまったく変わります。

そして、いつごろ引き取れそうか。捜査の状況によっては、すぐには返ってこないことがあります。見通しを聞いておけば、待つあいだの気持ちも違ってきます。最後に、必要な持ち物と手続きの場所です。二度手間を防げます。

電話を切ったあとで「あれを聞いておけばよかった」となりがちですので、メモを手元に置いて臨んでください。

似ているだけの別の個体だった、という場合もあります

残念な話もしておきます。連絡を受けて現物を見に行ったものの、自分の楽器ではなかった、ということが起こります。

同じメーカーの同じ機種であれば、外見はほとんど変わりません。だからこそ、シリアル番号や傷の位置といった客観的な材料が要るのです。ここが曖昧だと、確認そのものが進みません。

もし違っていた場合でも、落胆しすぎないでください。照合の仕組みが働いた結果ですから、次に本物が現れたときにも同じように連絡が来ます。届出を出しておいた意味は、確実にあります。

そして、この経験を次に生かしてください。「傷の位置をもっと具体的に伝えておけばよかった」と感じたなら、その場で情報を補足してもらいましょう。届出の内容は、あとから追加できます。

費用が発生する場合の考え方

弁償が必要になるケースについて、もう少し触れておきます。

心情としては納得しがたいと思います。盗まれた被害者なのに、なぜお金を払うのかと。ただ、法律は買った側の立場も考えています。事情を知らずに正規のお店で買った人が、ある日突然「それは盗品だから返せ」と言われ、支払ったお金も戻らないとなれば、それはそれで気の毒です。

そこで、どちらか一方だけが損をしないよう、期間や経路によって扱いを分ける仕組みになっています。この考え方を知っておくと、話し合いの場でも冷静でいられます。

なお、弁償した金額を盗んだ本人に請求できるかどうかは、犯人が特定されているかどうかによります。可能性がある場合は、警察や専門家に相談してみてください。

いずれにしても、こうした負担が生じるかどうかは時間との勝負です。早く届け出て、早く見つかるほど、無償で戻る可能性は高くなります。

持ち主だと示すために必要なもの

クラリネットの写真

返還の手続きでは、あなたが持ち主であることを示す必要があります。用意しておきたいのは次のものです。

まず被害届の受理番号。これがないと話が始まりません。次にシリアル番号。現物と照合できる唯一の決め手です。そして購入時の書類、領収書や保証書。最後に、盗まれる前に撮っておいた写真です。

すべて揃っていなくても手続きはできますが、材料が多いほど説明しやすくなります。シリアル番号と写真がそろっていれば、ご自身のものだと示しやすくなります。ただし、最終的にどう扱われるかは個別の事情によって変わります。

もし何も控えていなかった場合は、購入したお店に履歴が残っていないか問い合わせてみてください。修理に出したことがあれば、リペアショップの記録も有効です。あきらめる前に、思いつく先へ当たってみる価値はあります。

相談者

お店の方に直接お願いしたほうが早い気がするんですが。

案内役

気持ちは分かりますが、遠回りになります。お店からすれば、突然そう言われても確認のしようがありませんから。警察を通せば正規の照会になりますので、結果的に早いんです。

手続きは警察を通してください

直接交渉したくなる場面ですが、これはおすすめできません。理由は3つあります。

ひとつは、相手が確認できないことです。お店も個人も、あなたが本当の持ち主かどうかを判断する材料を持っていません。警察を通せば、被害届の記録と照合したうえで話が進みます。

ふたつめは、トラブルになりやすいことです。「返せ」「買ったものだ」という言い合いになれば、双方が感情的になります。第三者が入るだけで、話は驚くほど落ち着きます。

みっつめは、盗んだ本人が相手の場合の危険です。誰が持っているかは、実際に会うまで分かりません。ご自身の安全を最優先にしてください。

中古楽器店やリサイクルショップは古物営業法、質屋は質屋営業法に基づいて営業しています。適用される法律は異なりますが、いずれも不正品の疑いがあると認めたときは警察へ申告することになっています。盗品を扱うことはお店にとっても損失ですので、敵対する相手ではありません。正規のルートで進めてください。

戻ってきたあとにやること

チェロの写真

無事に戻ってきたら、まずリペアショップで点検してもらってください。

どこでどう扱われていたか分からないからです。管楽器であれば、タンポの状態や管の歪み、はんだの外れ。弦楽器なら、湿度による割れや接着の剥がれ。見た目では分からない不具合が出ていることがあります。

手入れがされないまま長期間放置されていた場合、そのまま吹いたり弾いたりすると、かえって傷めることもあります。まずは見てもらってから、安心して使い始めてください。

それから、掲載していた情報の更新です。当センターに掲載されている場合は、掲載ページの「発見・掲載終了を連絡する」からお知らせください。掲載を解決済みに切り替えます。情報を寄せてくださった方がいる場合、結果をお伝えできることもあります。

保険を請求していた場合は、保険会社への連絡も必要です。楽器が戻ったことで手続きが変わる可能性がありますので、早めに相談してください。

そして、今度こそシリアル番号と写真を控えてください。同じ思いを二度としないための備えです。

まだ見つかっていない方へ

ここまでは見つかった場合の話でしたが、まだ探している最中という方も多いと思います。

時間が経つほど不利になるのは事実ですが、あきらめる必要はありません。楽器は何年も経ってから市場に現れることがあります。フリマアプリの検索条件を保存して通知を受け取れるようにしておけば、手間なく見張り続けられます。

当センターでは、盗難や紛失にあった楽器の情報を無料で掲載しています。特徴やシリアル番号を公開しておくことで、見かけた方から情報が届く可能性が生まれます。掲載のときには、探すための検索キーワードもお渡ししています。何年前のものでも掲載できますので、まずはご相談ください。

よくある質問

弁償を求められた場合、断ることはできますか

状況によります。仕入れ経路や経過期間によって扱いが変わるためです。まずは警察に相談し、必要であれば専門家の意見を聞いてください。金額に納得がいかない場合も、感情的に交渉するのではなく、第三者を介して進めるほうが結果的にうまくいきます。

楽器が壊れて戻ってきた場合はどうなりますか

まずは戻ってきた状態を写真に記録してください。そのうえで、修理費用の扱いについて警察や保険会社に相談することになります。誰にどこまで請求できるかは事情によって異なりますので、記録を残したうえで確認するのが確実です。

2年を過ぎてしまいました。もう無理でしょうか

返還を求めることは難しくなりますが、状況によっては別の道がある場合もあります。相手が任意に返してくれる可能性もありますし、事件として扱われていれば流れが変わることもあります。あきらめる前に、一度警察へ相談してみてください。

保険金を受け取ったあとに楽器が戻ってきました

すぐに保険会社へ連絡してください。受け取った保険金の扱いについて、契約に応じた手続きが必要になります。黙っていると後で問題になりますので、戻った時点で正直に伝えるのがいちばんです。対応は契約内容によって異なりますので、担当の方に確認してください。

手続きにはどれくらい時間がかかりますか

状況によって大きく変わります。警察が保管しているだけであれば比較的早く済みますが、捜査中であれば終わるまで待つことになりますし、相手との調整が必要な場合はさらにかかります。焦らず、担当の方に見通しを確認しながら進めてください。

相談者

戻ってきたら、まず点検に出します。

案内役

ぜひそうしてください。そして今度は、シリアル番号と写真を控えておきましょう。同じ思いをしないための備えです。

まとめ

楽器が見つかっても、すぐ手元に戻るとは限りません。いま誰が持っているか、盗難からどれだけ経ったかで手続きが変わります。

中古店が個人から買い取っていた場合、2年以内であれば無償で戻る可能性があります。ただし2年という区切りは共通していますので、早く動くほど有利です。

手続きは必ず警察を通してください。直接交渉はトラブルのもとですし、危険も伴います。受理番号とシリアル番号、購入書類、写真を揃えておけば、話はスムーズに進みます。

楽器盗難・紛失情報センターでは、盗難や紛失にあった楽器の情報を無料で掲載しています。何年前のものでも掲載できますので、まだ探している方はご相談ください。掲載時には探すための検索キーワードもお渡ししています。

※ この記事は一般的な情報をまとめたものであり、法律上の助言を行うものではありません。当センターは警察・行政機関・法律事務所ではありません。個別の事情によって対応が異なる場合がありますので、警察・弁護士等の専門家へご相談ください。