中古楽器を買うとき盗品をつかまないために

相談者

フリマアプリで安い楽器を見つけたんですが、これって盗品の可能性もあるんでしょうか。買っても大丈夫ですか。

案内役

心配になりますよね。実は、知らずに買った側も損をすることがあるんです。見分けるポイントがありますので、購入前に確認してみてください。

結論からお伝えします。事情を知らずに買ったとしても、それが盗品だった場合、楽器を返さなければならないことがあります。しかも支払ったお金が戻ってこない場合もあります。

「知らなかったのだから自分は悪くない」というのは、気持ちとしてはそのとおりです。ですが法律は、本来の持ち主も保護します。両方を守るために、期間や経路で線を引く仕組みになっているのです。

この記事では、中古で楽器を買うときに気をつけたい点と、万一つかんでしまったときにどうするかをまとめました。安く買えたと思ったら大きな損をした、という事態を避けるためにお読みください。

知らずに買っても、返さなければならないことがあります

トランペットの写真

まず、この点を知っておいてください。中古品が盗品だった場合、本来の持ち主は一定期間内であれば返還を求めることができます。

期間は、盗難・遺失の時から2年です(民法193条)。この間に持ち主が見つけて申し出れば、返すことになる可能性があります。買った側に落ち度がなくても、です。

支払ったお金がどうなるかは、どこで買ったかによります。競売や公の市場、同種の物を販売する商人から善意で買っていた場合は、本来の持ち主が代価を弁償しなければ取り戻せないという定めがあります(民法194条)。結果として支払った金額が補われることもありますが、扱いは事情によって変わります。

一方、個人から直接買っていた場合はこの定めにあたらないことが多く、相手と連絡が取れなければ支払ったお金の回収は困難です。なお、フリマアプリでの購入が「公の市場」にあたるかどうかの判断は、事案によって変わります。

つまり、フリマアプリや個人売買でつかんでしまうと、楽器もお金も失う可能性があるということです。ここが最大のリスクです。

なお、実際の判断は個別の事情によって変わります。ここに書いたのは一般的な考え方ですので、当事者になった場合は警察や専門家に確認してください。

購入前に確認したいこと

木管楽器のマウスピース

すべてを見抜くことはできませんが、危ない取引を避ける手がかりはあります。

シリアル番号が確認できるか

これがいちばんの目安です。まっとうな出品であれば、シリアル番号を尋ねて断られることはまずありません。写真を追加してもらうよう頼んでもよいでしょう。

逆に、番号を隠している、聞いても答えない、刻印部分だけ写真がない。こうした場合は慎重になったほうがよいです。番号が分かれば照合されると知っていて、避けている可能性があります。

相場から離れすぎていないか

極端に安い出品は、うれしい反面、理由を考える必要があります。早く手放したい事情がある、ということですから。

もちろん、引っ越しや買い替えで急いでいるだけということも多いです。ただ、相場の半額以下といった価格には、一度立ち止まってみてください。

説明が楽器に詳しくない人の書き方になっていないか

機種名が間違っている、部位の呼び方がおかしい、状態の説明が妙に曖昧。演奏者なら当然触れる点に一切触れていない。こうした特徴は、持ち主でない人が出品している可能性を示します。

ただし、譲り受けた楽器を売っている方も同じ書き方になります。これだけで決めつけないでください。

付属品がそろっているか

保証書や購入時の書類が付いていれば、安心材料になります。ケースがない、マウスピースだけない、といった不自然な欠品は、持ち出しの経緯を想像させることがあります。

お店で買うほうが守られます

中古楽器店やリサイクルショップは古物営業法、質屋は質屋営業法に基づいて営業しており、いずれも買い取りのときに相手を確認して記録を残すことが求められています。不正品の疑いがあると認めたときは、警察へ申告することにもなっています。

そのぶん、盗品が紛れ込む確率は下がります。万一そうだった場合も、お店を通していれば話し合いの相手がはっきりしています。個人売買より安全なのは確かです。

相談者

シリアル番号を教えてもらったら、盗品かどうか調べられるんですか。

案内役

公式に照会できる仕組みは一般の方には開かれていません。ただ、当センターのような掲載サイトで検索してみることはできます。同じ番号が載っていれば、買う前に気づけますよ。

買う前に、掲載されていないか調べてみる

盗難被害の情報を公開しているサイトで、購入予定の楽器を探してみるという方法があります。

当センターでは、盗難や紛失にあった楽器の情報を掲載しています。メーカーと型番、そして分かればシリアル番号で照らし合わせてみてください。同じ楽器が掲載されていれば、その時点で購入を見送ることができます。

掲載されていないからといって盗品でないとは言い切れません。届け出ていない方や、掲載していない方もいるからです。ですが、確認する手間はわずかですし、気づけたときの効果は大きいです。

もし一致するものを見つけた場合は、出品者に問い合わせたりせず、当センターへご一報ください。掲載者と直接やり取りする必要はありません。こちらで運営が間に入って対応します。

買ったあとに気づいたら

弓の写真

購入後に「これは盗品かもしれない」と思い当たることがあります。掲載サイトで見つけた、演奏仲間に指摘された、といった形です。

このときは、まず警察に相談してください。黙って使い続けたり、慌てて売却したりするのは避けてください。事情を知ったうえで手放すと、立場が変わってしまいます。

相談するときは、購入の記録を持っていってください。いつ、どこで、いくらで、誰から買ったのか。取引画面のスクリーンショット、振込の記録、やり取りのメッセージ。これらが、事情を知らずに買ったことを示す材料になります。

記録が残っていれば、返還を求められた場合でも話し合いの余地が生まれます。逆に何も残していないと、説明する手立てがありません。中古品を買ったときの記録は、しばらく保管しておくことをおすすめします。

元の持ち主に直接連絡を取ろうとするのも避けてください。善意で対応したつもりが、感情的なやり取りに発展することがあります。警察や当センターを介したほうが、双方にとって落ち着いた話し合いになります。

記録を残すことは、買う側の備えでもあります

ここまで読んで、少し怖くなった方もいるかもしれません。ですが、中古で楽器を買うこと自体は何も悪いことではありませんし、良い出会いもたくさんあります。

大切なのは、記録を残しておくことです。購入の証拠があれば、事情を知らずに買ったことを示せます。そして、買った楽器のシリアル番号を控えておけば、今度は自分が盗難にあったときの備えにもなります。

領収書や取引画面は保存し、楽器の写真を撮り、シリアル番号をメモしておく。買う側にとっても売る側にとっても、この習慣が身を守ります。

中古市場が健全であることは、演奏する人みんなの利益です。盗品が流れにくい環境になれば、盗む動機そのものが減っていきます。買う側の一手間が、その一歩になります。

よくある質問

シリアル番号を聞いたら断られました。やめたほうがいいですか

断られた理由にもよりますが、慎重に判断されることをおすすめします。個人情報だと誤解している方もいますので、一度理由を尋ねてみてもよいでしょう。それでも答えが得られない場合は、他の出品を探すほうが安心です。

フリマアプリの補償で守られませんか

サービスごとに補償の仕組みは異なりますが、盗品だった場合にどこまで対応してもらえるかは一様ではありません。取引が完了してから時間が経つと対象外になることもあります。まずは利用しているサービスの規約を確認し、状況に応じて問い合わせてみてください。

楽器店で買えば絶対に安全ですか

絶対とは言えませんが、個人売買よりは安全です。お店には身元確認と記録の義務がありますし、万一のときも話し合いの相手がはっきりしています。とはいえ、お店も事情を知らずに買い取ってしまうことはありますので、購入記録は保管しておいてください。

返還を求められたら、必ず応じないといけませんか

状況によって扱いが変わります。購入した経路や経過期間によって、弁償なしで返すことになる場合、本来の持ち主から代価の弁償を受けたうえで返す場合などに分かれます(民法193条・194条、古物営業法20条)。ご自身で判断せず、購入記録を持って警察や専門家に相談してください。

買った楽器が掲載サイトに載っていました。どうすれば

掲載者に直接連絡するのは避けてください。当センターに掲載されているものであれば、お問い合わせフォームからご一報ください。運営が間に入って対応します。あわせて警察にも相談しておくと、その後の手続きが進めやすくなります。

相談者

買う前に調べてみます。番号も聞いてみますね。

案内役

その一手間で防げることは多いです。買ったあとも、記録と番号を残しておいてくださいね。今度はご自身の備えになりますから。

まとめ

事情を知らずに買った場合でも、盗品であれば返還を求められることがあります。個人売買では、楽器もお金も失う可能性があります。

購入前は、シリアル番号を確認できるか、相場から離れすぎていないか、説明の書き方は自然か、付属品はそろっているかを見てください。そして、盗難情報のサイトで同じ楽器が掲載されていないか調べてみてください。

買ったあとは記録を残す。これが、買う側にとっての備えになります。あわせてシリアル番号を控えておけば、今度はご自身が盗難にあったときの材料になります。

楽器盗難・紛失情報センターでは、盗難や紛失にあった楽器の情報を無料で掲載しています。購入前の確認にもお使いいただけますし、万一ご自身の楽器が被害にあったときにもご相談いただけます。

※ この記事は一般的な情報をまとめたものであり、法律上の助言を行うものではありません。当センターは警察・行政機関・法律事務所ではありません。個別の事情によって対応が異なる場合がありますので、警察・弁護士等の専門家へご相談ください。